ライブやイベントの記録
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『第六回ジェロニモ短歌賞』
2023年6月26日
会場:Naked Loft Yokohama
出演:鈴木ジェロニモ、細野祐作(ネギゴリラ)、根本ろ過(車海老のダンス)、レオ(凛凛パーカー)、徳永敦(バローズ)、人間横丁、梅田元気よく、林田洋平(ザ・マミィ)
◆短歌とは何か
・鈴木ジェロニモが極めて私的な見地から説明します。
◆第六回ジェロニモ短歌賞選考会
・出演者それぞれによる自作の短歌を鈴木ジェロニモが極めて私的な見地から選考し、第六回ジェロニモ短歌賞を決めます
第五回受賞作はリップグリップ倉田の作品。
「ISSもしもナスカの地上絵が絵しりとりなら報告しなさい」
テーマ「絵」
この日のスペシャルドリンクは「歌人ソーダ」。
根本「”歌人ソーダ”という歌人っぽくなさね」
前回はパンプキンポテトフライ谷が場を荒らしに荒らしたようで、恨み節と共に「人力舎って優しいんだなと思った」(この日は全員人力舎所属)と細野が事務所の結束を確かなものにしていました。
企画説明
まずは本イベントの趣旨の説明と、主宰である鈴木の短歌に関する経歴の紹介から始まります。
六回目の開催ともなると説明も小慣れており、流暢さを弄られる鈴木。
また前回の選考会にて、「短歌の定型は、漫才におけるセンターマイクである」という鈴木の持論が新聞にて取り上げられた旨を紹介した際も、谷に「(ジェロニモは)漫才師じゃねえじゃん!!!」と突っ込まれたそう。このあとも度々谷の名前が飛び出しました。
直近のニュースとして、同月12日に開催された『お笑い短歌リーグ』での勝利報告が。
チームジェロニモ短歌賞として鈴木、徳永、内田が参加。AIが作った歌と勝負する企画にて、AIに唯一勝利した鈴木。文句なしの実力です。
自由律と短歌の違い、それぞれの良いところや難しいところは?
鈴木「自分は制限がある方が作りやすい」
限られた空間に対し、ぴったりはまるものが見つかる気持ち良さが好きとのこと。
例として「河川敷に野球場がある」良さを出していましたが、既に歌人としての感性が出ています。
鈴木「自由律はフリーで『はい、面白いことやってください』って言われて舞台に上げられるような感じ、あとは人に説明しにくいというところもある」
結果発表
鈴木「今回のお題はどうでした?」
一同「むずかしかった!」
村田「難しくないときがない!」
今回提出された作品は以下の8首。テーマは「雨」。
①恵みだと人が言ってるだけの雨 やまない金を浴びても言えるか
②さっき見た明日の傘が 太陽になっていないか また見ちゃった
③野球部は雨で休みになったけどバレー部はあるから待っている
④屋根の音、音楽みたいと他人事で過ごすのどかさ踊るかみのけ
⑤にわか雨仕事を終えた傘達が汗を乾かし故郷を移す
⑥憎き君 上がれば虹に 人生かい 耐え忍ぶなら楽しんじゃおっか!
⑦だらだらとベッドで過ごしたい僕を肯定してくれるような雨
⑧さようなら 外はふたりのおもいでをひっくり返したような雨
匿名状態で順位を付け、発表と共に作者が名乗り出る形式です。
鈴木「順位付けるの難しかったです……でも1位は1位だなと」
5位 ⑤にわか雨仕事を終えた傘達が汗を乾かし故郷を移す
作:レオ
かなり残念そうな様子。
レオ「気合入ってたのに、あ~~~」
鈴木「なにより定型にバチッとはまっているし、情景を上手いこと浮かばせる言葉選び」
「ただ『故郷を移す』が少し分かりにくかった、これは?」
レオ「傘ってお店と家だけじゃなくて、電車だったり色んなところに行くじゃないですか」
【代案】
にわか雨仕事を終えた傘達が玄関先で汗を乾かす
雨粒は川のかたちになりたがるまるでそこから生まれたように
レオ「悔しいけど良いなあ~~」
4位 ⑦だらだらとベッドで過ごしたい僕を肯定してくれるような雨
作:細野
鈴木「これもとても良いですね、よく言いますが意味のスピードが丁度よい」「『僕』という語が少し人を立たせすぎかなとは思いました」
【代案】
だらだらとベッドで過ごす土曜日を肯定してくれるような雨
神様の脚本だから雨の日は雨の日らしく思っておく
3位 ②さっき見た明日の傘が 太陽になっていないか また見ちゃった
作:梅田元気よく
鈴木「直接言ってはいないけど、天気予報のことを指しているというのが分かりやすい」
梅田「That's right.」
鈴木「『ちゃった』のいじらしさが良い」
梅田「自分山登りが好きなのでこれは日常の歌です、テーマが雨と聞いてすぐに思いついた」
【代案】
さっき見た傘のマークが太陽になっていないかまた見ちゃった
〈一時雨〉を表すらしい閉じている傘のマークは実際ひらく
6位 ④屋根の音、音楽みたいと他人事で過ごすのどかさ踊るかみのけ
作:人間横丁内田
鈴木「シーンが明瞭に浮かんでくる」「『他人事』で雨を娯楽として楽しむ後ろめたさが含まれているのが良いですね」「でも『のどかさ』までで(1首のなかに組込む)情報は足りてるのかなと」
【代案】
両親が建てた一軒家の屋根を叩く嵐が音楽だった
屋根という楽器を叩く雨粒のやたらfffffff(フォルティッシシシシシシモ)
内田「最後の歌、さすがにこれはちょっとふざけてる!」
7位 ①恵みだと人が言ってるだけの雨 やまない金を浴びても言えるか
作:根本
根本「(恵みの雨という形容について)人が勝手に言ってるだけなので…」
鈴木「少し後半の意味が取りづらいかなと」「ヒップホップっぽくて口に出しやすいのは良いですね」
【代案】
打たれない暮らしになれば恵みだと思わないかもしれない雨だ
雨でなく金が降るならはっきりと恵みと言って笑って浴びる
2位 ③野球部は雨で休みになったけどバレー部はあるから待っている
作:徳永
鈴木「正直1位でも良かった、この光景を表す57577としてベスト」
徳永「情報を削ることに注力しました!」
【代案】
バレー部のあなたを待っているあいだ音符のような雨粒だった
一本の傘に隠れたぼくたちの激しく濡れるエナメルバッグ
残すところ2首。林田と山田は緊張の面持ちです。
1位 ⑧さようなら 外はふたりのおもいでをひっくり返したような雨
作:林田
林田「やったーーーーー!!」思わず立ち上がりガッツポーズ。
鈴木「『ひっくり返したような』というパワーワードがすごい、勇気ある語彙ですね」「『ふたり』も『おもいで』もひらがななのが良い、(文章として)すっきりとしたデザイン」
8位 ⑥憎き君 上がれば虹に 人生かい 耐え忍ぶなら楽しんじゃおっか!
作:人間横丁山田
鈴木「意味はよく分かるんですけど言葉選びが少し惜しかった」
山田「まあ、まあそうか……」「テレビの収録で失敗してうわ~ってときに作りました」
鈴木「確かに『!』が虚ろな感じがしましたね」
内田「悲しい状態がイレギュラーだから語彙がちぐはぐになっちゃったのかもね」
【代案】
虹という比喩を使ってくれたからずっと雨だったって分かった
少年がそこだと言って走り出す虹の出発点をめがけて
鈴木「ここまで順位をつけておいて、という感じですが自分のためにやっていいんですよ短歌は。今日のも日記をランキングしているようなもので、お遊びですよ」
内田「上位組はときめきがありますね」
林田「生きててよかった~!」
アフタートーク
会場に遊びに来ていた9番街レトロ京極がサプライズで登場。
京極「誰が一位だったの?」
内田「ずっと見てたじゃないですか~!」
京極「自己紹介する?俺のこと知ってる人手挙げて(会場を見まわして)じゃあいいか」
「正統派吉本興業所属です」
アフタートークでは会場のお客さんや配信を見ている人から募った短歌に、鈴木がその場でコメントを返します。この日は歌人の橋爪志保さんが参加。お題は同じく「雨」
⇒ https://twitter.com/rita_hassy47/status/1673296327453851648?s=20
最後まで大盛り上がりで終了!
お互いの作品を決して腐すことなく尊重し合う、穏やかでとっても楽しいイベントでした!鈴木さんの、ニュアンスを言葉に変換する能力がまあ高いこと。解説や代案を経て、作品ひとつひとつの世界が広がっていくような感じがしました。
次回も是非参加したいです!